リージェス(25)

リージェス(25)を選ばれた方のみお進みください。

あなた達レジスタンスの幹部は2年前に前任者達が戦火に巻き込まれ死亡した際に就任した。あなたと他のメンバーが出会ったのはその時であり、それ以前からあなたと面識があるメンバーはグレイシアしかいない。
彼女とあなたの出会いは7年前。新人類に支配されていた土地で捕虜となっていた当時11歳の彼女をあなたが助け出した。同じように捕虜とされていた人々の中にレオナルドもいたらしいが、彼とは面識がない。2年前、グレイシアが医療を学び若干16歳で医療部門の幹部に抜擢された時はあなたも驚いた。その時、グレイシアからは「今度はあなたを助けるためにここに来ました」と言われたのを鮮明に覚えている。

あなたにはユナ(25)という妻がいる。彼女とは娘のリズ(5)が産まれたのを機に夫婦となった。レジスタンス内は機密性が高く家族のことを話すこともほとんどないが、あなたの副官だけには妻と娘の話をしたことがある。

ユナとは6年前にバザールで知り合い、ユナから猛烈なアプローチを受け恋人同士となった。その時のことを彼女に聞くと「やっぱり恋人にするなら将来性が高そうな男がいいでしょ?」と言われてしまう。その言葉がどこまで本心かあなたにはわからない。だが、彼女があなたのことを、そして娘のリズのことを本当に大切に想ってくれているのをあなたは知っていた。

つい2週間ほど前のことだ。戦線から戻ってきたあなたが居住区にある自宅へ帰ると、そこにはユナとリズの姿は無く、代わりに1通の封筒と注射器が机の上に置かれていた。封筒を開いたあなたは、中に入っていた写真を見て愕然とした。そこに写っていたのは、目と口を封じられ、体を縄で縛られ動けなくなっている妻と娘の姿だった。そして、もう1つ中に入っていた手紙にはこう記されていた。

「こんにちは、リージェスさん。

この度、我々新人類は貴方を密偵として雇うことに致しました。
もちろん拒否権はございません。貴方が従わなければ写真に映っているお二人には即座に死んでいただくこととなります。よろしければこの先をお読みください。

はい、よろしいですね?
それではまず、注射器を腕に刺し、中の溶液を全て注入してください。そちらには、目に見えないほどの小さなナノ爆弾が入っています。
ナノ爆弾は貴方の血管を巡り、やがて脳へと到達します。貴方がもし不用意に密偵であることを話せば、それが脳内で爆発し貴方を死に至らしめることができるのです。もちろん、この指示に従っていただけない場合も即座にお二人には死んでいただきます。それが済みましたら、通信機をお取りください」

手紙はそこで終わっていた。
あなたは通信機を手に取る。
すると、ヴヴッというバイブ音がした。
あなたはスイッチを押し、通話状態にする。

「こんばんは、リージェスさん。まだ注射器を使用されていないようですね。全てこちらで確認できていますよ。速やかにご使用ください」

全ては筒抜けだった。
あなたは注射器を手に取り、意を決して腕に刺した。中身を全て注入し終えると、通信機の向こうから「よくできました」と声が聞こえた。淡々とした調子の変わらない声。その言葉で、あなたは既に心を折られていた。
自分が情けなくてたまらなかった。
こんな紙切れ1枚、言葉1つに逆らえない自分の無力さを呪った。

「さて、私からは以上です。以降は私方の代表と直接連絡を取り合っていただきます」

そう言って、1度通信が切れる。
そして再度かかってきた。

「ハローハロー、貴方がリージェスさん? こんばんは」

調子外れの挨拶と、幼い少女のような声。
間違いなかった。この向こうにいるのは……

「アーシュ・ウルゴア…!!」
「ピンポン、ピンポーン! だーいせーいかーい!」

あなたの憎々しげな声を意にも介さず、彼女は続けた。 アーシュ・ウルゴアの要求はこうだ。

一つ、何かあれば通信機ですぐに連絡する。
二つ、何もなくても2日に一度は連絡する。
三つ、その都度必要な指示を出すのでそれに従う。

「もちろん報告で嘘はダメだよ? わたしに嘘は通用しませーん!まー、困った時は協力者くんが助けてくれるから! んーじゃね〜」

そう言ってアーシュ・ウルゴアからの通信は切れた。協力者……つまり、あなたを監視し、必要とあらば処分することのできる人物がいることを示していた。もうあなたに、選べる道などなかった。

一昨日の行動

この日、幹部メンバーは朝から全員が基地内にある幹部会議室に集まっていた。そこで話し合われたのは、捕虜となっている人類の解放作戦。決行は3日後だ。昼まで続いた会議を終え、それぞれが持ち場へ戻っていく。あなたも幹部会議室を離れ、訓練棟へと向かった。
そして、誰もいない訓練棟の通路であなたは通信機を使った。

「先ほどの幹部会議で3日後に捕虜解放作戦が行われることが決まりました」
「はいはーい! りょうかいだよー。いや〜、最近君ら調子乗っちゃってるね〜。うーん、よくない。よくないよ。ほんっとーに、よくない! だからさ、今決めたんだけど、君らの代表さ、殺しちゃおうよ! そんで、バラバラにして箱に詰めて、お手紙添えて、幹部達に見せつけるの! こっちは全部わかってるぞーって! ね? お洒落でしょ?」
「…………」
「んんー? いま悪趣味なゲス野郎とか思ったでしょ! まぁいいや、よろしくね〜。協力者くんにはこっちから連絡しとくからさ! 手紙はそっちで用意させるよー。代表殺しは君に任せるね! あと、幹部のセレスティアの秘密とかも分かると嬉しいな〜。できれば旧人類の結束が壊れそうなやつ! それが全部終わったら君の家族を返してあげるよ!」
「わかり……ました…」

そこで通信は切れた。
遂に殺しの指令が来てしまった。しかも相手はレジスタンスの代表。
これを実行すれば、レジスタンスのみならず人類に大きな損害を与えることは間違いなかった。もしかすれば、この手で人類が滅びるかもしれない。人類滅亡と家族の命が、あなたの天秤にかけられていた。決められるはずもなかった。あなたが立ち止まっていると、後ろから声をかけられた。

「リージェスさん! どうされました?」
「あ、あぁ、グレイシアか。何でもないよ」

表情から悟られぬよう、努めて笑顔で返した。彼女も笑顔を向けてくる。
仮に、だ。もし仮に自分が代表殺しをしなかったとしよう。そうすれば自分は脳内に入れられたナノ爆弾によって処分され、妻と娘も殺されるだろう。そして、代表殺しはおそらく件の協力者という人物が実行する。密偵には例えばグレイシアのような新しい人物が据えられ、また自分のような地獄を味わうことになる。結局は変わらない。どちらを選んだとしても……
ならば自分がやるしかない。せめて妻と娘を救うために……。あなたは決意を固め、グレイシアの頭を撫でてその場を立ち去った。その夜、あなたが居住区にある自宅に帰ると、2通の手紙が置かれていた。

「決行は明日。昼に代表のいる地下シェルターへ向かえ」

端的な文章の指令書だった。
そしてもう1枚はアーシュ・ウルゴアの言葉を書き連ねたと思われる手紙。あなたには最初から、逃げ道など用意されてはいなかったのだ。
あなたは指令書を燃やしながら、自らが辿る運命を呪った。

昨日の行動

昼になり大きな箱と解体用のノコギリ、暗殺用のナイフを持って自宅を出たあなたは、その足でレジスタンス代表ユークリウス・ノアの住まう地下シェルターへと向かった。
目立たないように裏路地を使えば、ひと目も全くと言っていいほどになかった。地下シェルターに着いたあなたは、もしかしたらセレスティアが居るかもしれないと警戒もしたが、それも杞憂だった。
難なくユークリウス・ノアの前にたどり着いたあなたは、彼にナイフを突きつけた。驚かれるか怒りで抵抗されるか、はたまた命乞いでもされるかとも思ったが、彼の反応は至って冷静だった。

「私を殺しに来たんだね?」
「はい…そうです」
「家族を人質にでも取られたかね。それはさぞ苦しかったろう」
「……………なんで抵抗しないんですか…」
「例えどの未来を選んでも、私が今日死ぬことには変わりないからだよ。ならばせめて、愛すべき同胞の苦しみを取り除くために時間を使おうという気にもなる。悔やむらくは、もう少しだけ早くこの運命を知ることさえ出来ていれば……ということくらいかな」
「……………何を言ってるのかわかりません…」
「君が苦しむ必要はないということだ。さぁ、早く」

そして、あなたは彼の言葉に導かれるようにしてナイフを喉元に突き立てた。まるで、彼は全ての運命を受け入れているかのようだった。
その後、あなたは地下シェルター内のシャワールームで彼の遺体を泣きながら解体した。自分が何のためにこんなことをしているのか分からなくなりながら、それでも妻と娘を救うためだと自分に言い聞かせて必死だった。

その時、通信機が鳴った。
あなたはすぐに通信をオンにする。大丈夫。呼吸は乱れていない。いつも通りだ。

「あ、リージェスさん!」
「グレイシアか。どうした?」
「えっと……その……」

グレイシアからだった。
少しだけ間が空いて、再び彼女は話し始めた。

「あの……明後日からの作戦でリージェスさんたちは最前線で戦われるので……、その……私たちも全力でリージェスさんたちの力になりますので……!」
「あぁ、知ってる。いつも助かってるよ」
「は、はい! ではまた明日!」
「あぁ、また明日」

努めて冷静に、声音で悟られぬよう言葉を交わし、通信を切る。そして再び目の前にあるユークリウスの遺体と向き合った。
ユークリウスの遺体を解体し箱に詰め終えたあなたは、地下シェルターのシャワールームを赤く染め上げていた血を流し終え、荷物を全て持って裏路地を通り自宅へ戻った。
その夜、あなたは誰もいない基地の入り口へと箱を運んだ。その時、一緒にユークリウスの解体に使った【ノコギリ】と【ナイフ】も居住区/南側の裏路地へと捨てた。シャワーで洗い流したとはいえ、それをもう手元に置いておきたくはなかった。アーシュ・ウルゴアの言葉が記された手紙を添えて。

今日の行動

あなたが基地内の幹部会議室に訪れると、そこには既にセレスティア以外のメンバーが揃っていた。そして、円卓の上にはあなたが夜のうちに運んだ箱が置かれている。聞けば、グレイシアがここまで運んできたらしい。その場でレオナルドが爆発物でないことも確認していたようだからと、この場に持ってきたそうだ。
そして少し遅れてセレスティアもやってきた。全員が揃ったところで、手紙に書かれていた「必ず幹部全員で開けてください」の言葉を律儀に守り、セレスティアが手紙を読み上げながら箱を開いていく。

「ハローハロー、旧人類のみなさま、いかがお過ごしですか?」

そんな調子はずれの冒頭を読み上げたところで、セレスティアが箱の中にあるユークリウスのバラバラにされた遺体を見て崩れ落ちる。そして彼女は叫んだ。

「絶対に許さない…!!」

あなたの持ち物

脳内にあるナノ爆弾

科学や医療の技術を使って調べられると気付かれる可能性が高い。

ノコギリ

遺体を解体するのに使用したノコギリ。現在は居住区の裏路地にあるだろう。

ナイフ

殺害に使用したナイフ。現在は居住区の裏路地にあるだろう。

あなたの住居

あなたは妻や娘と共に居住区/東側に住んでいた。

勝利条件

・妻と娘を取り戻す。または、エンディング時点で妻と娘がどこにいるかを特定する。
(※あなたは妻と娘を取り戻さない限り「黒幕」である監視者に逆らうことはできない)

ミッション

・セレスティアの秘密を探る。

特殊技能

部下の派遣

あなたはこの混乱に乗じて信頼のおける副官に家族写真を渡し、そこに写った2人の捜索を依頼した。妻と娘が誘拐され、自身の脳内に爆弾が入れられていることは伝えていない。しかし、それでも彼は「あなたの為ならば何も聞かずに従います」と言ってくれた。
もし動き過ぎれば監視者にあなたも副官も殺されてしまうだろう。チャンスは2回が限界だろう。

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