紫紺の暴力

貴方は確かな選定眼を持っている。
赤と青の2つ…
色相環では付かず離れずの
ちょうど良い距離にあり、
人間が最も美しいと感じる組み合わせの
2色の名刺を、ほどよく集めることができた。
赤の名刺に染み込んだ毒を、
青の名刺に塗られた薬で
見事に打ち消すことに成功した。
尖ったナイフの上に爪先で立つような
絶妙なバランス感覚を持っていたことを
誇るといい。

Q.貴方は記憶にある探し人に逢えましたか?

はい

貴方はこれまでの人生で
多くの人を踏み台にしてきた。
貴方にとって「友人」とは
「利用価値のある者」であり、
「親友」とは「相手を欺くために使う言葉」だった
…今日、この時までは。
今宵貴方は深い因縁で結ばれた相手と出逢い、
多くを語り合った。
それは、基本的に他人を信用せず、
誰とも附かず離れずの距離を保つことを
信条としていた貴方にしては珍しく、
強めの一歩を踏み込んだ行為だった。
今から思えばあの出逢いが無ければ、
自分は赤と青の名刺を
バランス良く蒐集することが
出来なかったかもしれない。
人を全面的に信用するなんて
愚か者のやることであり、
今でもその信念は揺るぎないが……
偶(たま)には損得勘定抜きで
心行くまで他人と語るのも
悪くないかもしれないと貴方は思い始めていた。

貴方はこの選定で生存しました。
ファミリアのボスは
貴方の読みの深さを買うことでしょう。
組織の上層部から何かしらの勧誘があった時、
そこにどう近付くのか、
あるいは遠ざかるのかの判断が重要です。
貴方が他者との適切な距離を把握し、
これから先も無難に生きていけるよう
心から祈っています。

「アタシは馬鹿の方が好きなんだけどね」

「あー…無難な人生ってほんっと退屈!」

「ふーーーん。中々やるねえ(悔し気な顔)」

いいえ

貴方は探し人に出逢えなかった。
否――途中から探すのを諦めた。
所詮人間は死ぬまで独り。
友人とは利用する物であり、
決して信頼する者ではない。
深い関係になればなるほど
意味も無くこちらが消耗するだけだ。
情に竿させば流されて、
意地を通せば窮屈だと言ったのは
何処の文豪だったか。
貴方は人間を信じていない。
だから誰からも信じてもらえない。
これからも色相環の赤と青の位置関係の如く、
知り合ったあらゆる人間と
附かず離れずの丁度良い距離を保って、
苦も無く、楽も無い、無難な人生を送るのが
貴方にはお似合いだ。

貴方はこの選定で生存しました。
ファミリアのボスは
貴方の読みの深さを買うことでしょう。
その信頼にどう応えるべきなのかは、
貴方が自分で考えてください。

「アタシは馬鹿の方が好きなんだけどね」

「あー…無難な人生ってほんっと退屈!」

「ふーーーん。中々やるねえ(悔し気な顔)」

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