抱く黄金

貴方は黄色い名刺に心惹かれるものがあり、
何気なくたくさん集めただろう。
素晴らしい。その直感は正しかった。
試しにそこらの古物商で、
その名刺の束を換金するがいい。
特別な金を
さらに薄く引き伸ばして作った黄色い名刺は、
貴方に多くの富をもたらすだろう。
…しかし、貴方は既に毒を身に受けている。
陽気に会場を抜け出すのも束の間
燦然と煌めく金色の星々が目の前に散って、
途端貴方は絶命した。

Q.貴方は記憶にある探し人に逢えましたか?

はい

貴方の骸を貴方の探し人が漁っている。
黄色の名刺を見つけると顔を歪ませる。
その名刺を丁寧に持ち出して
貴方の荒れた身なりを整えてから探し人は消えた。
床に倒れて絶命している貴方は
まるで時間の止まった生者のようだ。
苦しみのない表情に整った身なり。
だからといってそこに価値はないのだが。

貴方はこの選定で死亡しましたが、
探し人には運よく逢えたようです。
きっと心残りはないでしょうが
次は目先の金より
目先の命を優先させましょう。

「ハハ!悪党に似合の末路じゃないか」

「あらら、なんて幸せそうな死顔。笑えちゃう」

「黄金を抱いて幸せそうですね!」

いいえ

貴方の骸を
血で両の手を汚した悪党が漁っている。
全く汚らわしい。
黄色の名刺を探して必死のようだが、
残念そこじゃあない。
そして漁る悪党の後ろから
散弾銃を携えたエリカの姿。
小気味よく笑って悪党の血を散らす。
ついぞ悪党は
黄色の名刺を探し当てることは出来なかった。
ざまあみろ。
倒れた悪党の奥のエリカが
貴方に微笑みかけたような気がした。

貴方はこの選定で死亡し、
探し人にも会えませんでした。
心残りがあるなら
次は目先の金より
目先の命を優先させましょう。

「ハハ!悪党に似合の末路じゃないか」

「あらら、なんて幸せそうな死顔。笑えちゃう」

「黄金を抱いて幸せそうですね!」

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