青葉の悪党

最高の結末だ。
医療の神マーキュリーを司る青と、
美と繁栄の女神ヴィーナスを表す
黄色の名刺をかき集めた貴方は今、
不必要なほどの大量の薬と
使い切れないほどの財産を手にして
きっと困惑しているだろう。
青の名刺には毒を打ち消す薬が
たっぷりと塗られており、
黄色の名刺は特別な金を
薄く伸ばして作ったものだ。
貴方がさらに望むなら、
その薬を、毒でのたうち回っている
負け犬たちに有料で分けてやることもできる。
かつてマーキュリーは医者を作り、
医者が商売に困らないように
毒を与えたという逸話のように。
貴方こそがグリーンウッド(悪党)だ。

Q.貴方は記憶にある探し人に逢えましたか?

はい

命と財産。
生きていく上で必須の二つを手に入れた貴方は
脚の向くまま気の向くまま、鼻歌混じりで歩き出した。
今宵出逢ったあの探し人は
どんな結末を迎えたのだろうか。
貴方は手元の青と黄色、
そして此処には存在しない赤い名刺に想いを馳せる。
今日、この場で出逢えたのも何かの縁だ。
もしあの人が毒を受けて困っていたら、
泣いて縋(すが)って
土下座するまで散々勿体付けてから、
この青い名刺を法外な値段で売りつけてやろう。
そして、もし相手が貴方よりも
多くの金を所有して生存するという、
貴方よりも遥かに優雅な結末を謳歌していたら…
「おめでとう」と言いながら親しげに肩に手を回し、
もう片方の手に仕込んだ青い名刺を翻して
その喉元を掻っ切ってやろう。
薬も過ぎれば毒になり、嫉妬は人を殺すのだ。

貴方はこの選定で成功しました。
ファミリアのボスは
貴方に一目置くことになるでしょう。
ただし悪事は程々に。
貴方が闇を望むとき、
闇もまた貴方を狙っているのですから…

「ふぅーん……ずいぶん賢いなぁ?」

「へぇ…すごいのねアナタ…(真顔)」

「僕の右腕になってよ!」

いいえ

貴方は完遂した。
生き残った上に財を成すという、
曲者揃いのボス達でさえも一目置くような
素晴らしい結果を遺したのだ。
唯一の心残りは
終(つい)ぞ探し人に出逢えなかったことである。
何かを探しに来た貴方が、
何も見つけらずに帰途に就くーー
心にポッカリと空いた穴の内側を、
思いの他強い旋風が勢いよく噴き抜けて行く。
勝つには勝ったが目的は果たせなかった。
それが画竜点睛を欠くことになったのか、
蛇足となるのを防いでいたのか、
龍虎の如く目覚ましい活躍をした貴方にも
何とも判別が付かなかった。
最後の一手に届かなかったという無念は、
これからも貴方の心に
澱(おり)のように残り続けるだろう。

貴方はこの選定で成功しました。
ファミリアのボスは
貴方に高い評価を下すでしょう。
ただし目立ちすぎるのはお薦めしません。
貴方はいつだって、
惜しい所で最後の一歩が届かない、
残念な人なのですから。

「ふぅーん……ずいぶん賢いなぁ?」

「へぇ…すごいのねアナタ…(真顔)」

「僕の右腕になってよ!」

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